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聞こえなくなった夜

体験記

聞こえなくなった夜、耳鳴りが大きくなっていることに気づきました。

ただ、30年近く普通に聞こえていたせいでしょうか、なんとなく聞こえている時と変わらない気もしていました。

つい数ヶ月前、音楽が好きな私は、パソコン用の5.1chサラウンドスピーカーを購入し、映画のDVDをわざわざパソコンで再生して楽しんでいるところでした。

ヘッドホンと聞き比べてみよう!

そう思ってヘッドホンをしてみると、特定の登場人物だけセリフが聞き取れません

あれ?

このDVDおかしいぞ、レンタル屋さんに文句言わなきゃ!

しかし、聞こえなくなった瞬間が頭をよぎりました。

ヘッドホンのレフトとライトを逆にして、この登場人物のセリフが聞こえたら…

逆にしても聞こえないままであってほしい。DVDがおかしい、もしくはヘッドホンが壊れていてほしい。

現実は

その登場人物の声だけが鮮明に聞こえました

私の聞こえない方に立って話しているため、ステレオの左寄りに録音されていたのです。

家内に、左耳から呼んでみてというと、やはりほぼ聞き取れません。

いや、何を言っているかだけではなく、声に気づけないのです。

聞こえなくなった夜、改めて自分の身に、戻ることのできないなにかが起こったことを実感しました。

ほっとけば数日で治るだろう。

そんな考えはもうできませんでした。明日、仕事帰りに病気へ行こう。

ちゃんと診てもらって、お薬を貰おう。

そして、翌日から間違った治療のために約1ヶ月もの通院が始まるのです。

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