開頭手術で取り切れなかった腫瘍への治療は続く
ICU(集中治療室)から一般病棟へ移った私は、痛みやだるさどころか妙に寝付けない状態になりました。
夜9時半に消灯となって、4人部屋は一斉に暗くなります。
どうしてもテレビを見たい人はイヤホンを使用し、本を読みたい人は手元灯を使った最小限の明かりで起きることとなります。
キャンプのテントの中のように、静かで暗い中、自然と眠くなるのが普通でしょう。
しかし私は10時半にとりあえず寝ても、自然と深夜2時前後に起き、それから目が冴えてしまい寝付けなくなりました。
睡眠時間約4時間、これが約3週間続くのです。それでも夜10時半に寝ようとしなければ寝付けなく、自然と深夜に起きてしまうといった生活となっていました。
食欲は十分、車椅子も3日もかからず卒業し、深夜のナースステーション前で麻痺してしまった左半身を叩き起こそうとスクワットなどを黙々としていました。おかげで、ふとともは数日に渡って筋肉痛になる有様です。
開頭手術後にこんなに激しい運動をすることすら異常ですが、おそらく通常の判断能力に程遠かったのだと、今振り返ればわかります。
そうこうしているうちに、次の治療「放射線照射」と「抗がん剤服用」がいよいよ始まったのです。
放射線治療〜リニアック
入院した病院は、たまたま今春に高精度放射線治療棟ができたばかりで、内装は有名ホテルのロビーかと思うほどのモダンなデザインでした。新築の香りに包まれて、気さくな職員が丁寧に説明、案内をしてくれます。
とてもゆったりとした空間で、病院内であることすら忘れさせてくれるような場所です。これから平日は毎日ここで放射線治療を受け、計30回に及ぶ放射線照射を受けることとなります。
放射線治療は脳腫瘍を破壊するために行うものです。しかし、脳腫瘍が正常細胞を包むようにいることから、どちらにも照射せざるを得ないのが実情です。
放射線治療専任の医師は、とても簡潔かつわかりやすく説明してくれました。
「正常細胞も脳腫瘍とともに傷つきます。ただ、正常細胞はもとに戻ろうとし、脳腫瘍はもとに戻る力が弱いため消えてゆくという考え方です。今回の治療は、再発防止もしくは根治を目的として行います。治療終了後から3ヶ月間は車酔いのような症状、食欲不振、また一過性ではありますが症状の悪化が出る場合もあります。ただ、3ヶ月過ぎた頃から徐々に元通りになりますから、頑張っていきましょう。」
わかりやすい説明とともに信頼できる笑顔に励まされ、今日現在(令和2年7月)も通院して治療を受けています。
私の場合、幸いにも現在は副作用と言えるほどの辛さや苦しさはまだ出ていません。
ただ、テレビドラマでよく見る髪の毛を手でとかしたら大量の頭髪が抜けるというのは治療開始から約1週間後に始まりました。
なんとなく頭がかゆい気がしたので、手ぐしをしたら大量の抜け毛…
さらに指でつまんで引っ張ってみたところ、まったく突っ張ることもなく、するりと小筆ほどの頭髪が抜けました。
「テレビドラマの…あれだ。まさに、これのことだ…」
私は中年男性です。スキンヘッドをおしゃれとしてわざわざ美容室で数千円払う人もいる時代。下手に一部だけハゲているくらいならと、すぐに丸刈りにしました。
一方、同じフロアのおばあさんなども同じように抜けているのを目にするととても胸が苦しくなります。
でも、いまはキャップにウィッグがついている医療用のものも販売されており、私の病院内にあるコンビニでは2種類販売されているほどメジャーなものがあります。
女性でもしも抜けてしまっても、かえっていくつものヘアスタイルが楽しめると思って頑張って欲しいと思います。
HIYE フルウィッグ 医療用ウィッグ 人毛100% 女性 手植え 超リアル人工皮膚付け ストレート ショットボブ ウィッグ かつら (自然色, 28cm)
FESHFEN ウィッグ かつら ミディアム グラデーション セミロング フルウィッグ ロング レディース wig ストレート 自然 医療用 原宿系 小顔効果 ネット付き 耐熱 黒&アッシュグレー
Linea-Storia(リネアストリア) 医療用 ウィッグ フルウィッグ SMサイズ ウィッグ ショート 『天使のリーフショート』 (M, ミルクブラウン)
Amazonで検索した一部でもこんなにおしゃれなものが出てきます。「ウィッグ 医療用」などで検索してみてください。
実はぼくも病院のコンビニにあった試着用をかぶってみました。ハゲにしたことが恥ずかしいのではなく、大きく切除した頭皮に残る傷があまりにも目立ちすぎたのです。
さすがにこのまま通勤はできませんし、働くことも…。
で、かぶって鏡で見たところ、やはり男性には似合わないという残念な結果でした。どうしよう…
メーカーさん、もしこのブログを見ていらしたら、男性用も商品開発してください。職場に復帰しづらいのは、わりと深刻な悩みです。
抗がん剤の服用も問題なく
抗がん剤の服用も始まりました。
朝6時、6時半の服用後、1時間後に朝食、その後4種類の薬を服用。昼に1種類、夜に2種類。
おかげさまで抗がん剤も大きな副作用はなく、いまのところ悩ましいのは便秘程度でおさまっています。
退院までの間、とりあえず放射線治療と抗がん剤の服用、そしてリハビリが日課となっています。
リハビリは3種類
私は右脳の腫瘍による頭蓋内の亢進(こうしん、高圧状態)で、左半身が麻痺した状態となりました。
このため、上半身(主に左手)、下半身、そして知能の3種類のリハビリが必要となりました。
上半身は作業療法士の若手のさわやかな男性の先生が、下半身は理学療法士の若い女性の先生が、知能は言語療法士の若い女性の先生がそれぞれ担当くださいました。
3先生ともとても明るく接していただき、最後の方にはほとんど世間話ばかりしていたような距離感で、本当に入院生活の中で心休まる時間を過ごさせていただきました。
それぞれの先生については、もっと詳しく色々書きたいところなのですが、あんまり書きすぎるとご本人たちから笑いながらお叱りを受けると思うので、今回は割愛させていただきます。
そして、少し早まった退院の日を迎えるまで、毎日、案外忙しい入院生活を送ったのです。